「在庫管理、紙をやめたいんです」
2026年1月、AI顧問の1on1で、こんな相談を受けた。
現在の在庫管理は、印刷したチェックリストを持って現場を回り、必要な商品を手書きで記入。それを別の担当者が見て発注する流れになっている。
データは紙のファイルに残るだけ。次の発注の時には、また同じ作業を繰り返す。
この相談者は、「写真を撮ったら、在庫切れリストが自動で出てくる仕組み」を作ろうとしていた。
でも、画像解析がうまくいかない。スプレッドシートへの接続も失敗する。集合研修でも時間切れで終わってしまった。
この時、どんな設計を提案したのか。その記録を残しておきたい。
【Before】在庫管理の現場で起きていること
まず、現在の在庫管理フローを整理した。
今の流れ
- 補充チェックリストを印刷
- 現場で目視チェック
- 発注が必要な商品を、印刷した紙に手書きで記入
- 別の担当者がその紙を見て、発注サイトで注文
- 発注した商品の記録は、紙のファイルに保管(データ化されない)
課題
このフローには、いくつかの課題がある。
- 手書き記入のため、次回の発注時に参照できない
- 発注履歴がデータとして残らない
- 印刷→記入→別担当が発注という二段階で時間がかかる
この相談者は、Difyというツールを使って、画像を撮影したら在庫切れリストが自動で出力される仕組みを構築しようとしていた。
でも、いくつかの壁にぶつかっていた。
ぶつかっていた壁
- 既存のスプレッドシートに接続できない(権限の問題)
- iPhoneで撮影した画像がアップロードできない
- 画像解析の精度が不安定
【Notice】「完璧な仕組み」より「今日から回る仕組み」
在庫管理をもっと精密にやろうと思えば、いくらでもできる。
画像認識で商品を自動判別。QRコードで個別管理。発注サイトと直接連携して、ワンクリックで注文完了。
でも、現場で今すぐ回せる形を作るなら、もっとシンプルな方が早い。
提案した設計思想
今回の提案は、以下のような構成だった。
1. Difyで画像解析→JSON出力
Difyは、LLM(大規模言語モデル)を使ったワークフローを構築できるツールだ。
ここでやることは、画像を解析して、在庫切れの商品名と個数をJSON形式で抽出すること。
この時点では、精度100%を目指さない。まずは「動く形」を作る。
2. GASでビジネスロジックを処理
Google Apps Script(GAS)で、Difyから受け取ったJSONデータをスプレッドシートに書き込む。
さらに、発注サイトのURLを商品名から自動生成して、スプレッドシートの横に出力する。
これで、在庫切れリストを見たらワンクリックで発注ページに飛べる仕組みになる。
3. LLM選定とプロンプト最適化
画像解析の精度を上げるには、LLMの選定とプロンプトの工夫が重要だ。
今回は、Geminiを推奨した。画像解析の精度が高く、JSON出力にも対応している。
プロンプトは、以下のように具体的に指示する。
- 「在庫切れの商品名と個数のみを抽出」
- 「JSON形式で出力」
- 「不明な場合は空欄にする」
段階的なアプローチ
この設計のポイントは、「まず別のスプレッドシートに出力する形を作る」という点だ。
既存のスプレッドシートへの接続は、権限の問題で時間がかかる可能性がある。
だから、まずは新しいスプレッドシートに出力する形を作って、動作を確認する。その後、接続を調整すればいい。
- Difyで画像解析→JSON出力: 在庫切れの商品名と個数を抽出。精度100%を目指さず、まず動く形を作る
- GASでビジネスロジック: JSONをスプレッドシートに書き込み、発注URLを自動生成
- LLM選定とプロンプト最適化: Geminiを推奨。プロンプトで具体的に指示して精度を上げる
- 段階的アプローチ: まず新しいスプレッドシートに出力。動作確認後、既存シートへの接続を調整
【After】「次も自分で調整できる」仕組み
この設計の価値は、「次も自分で調整できる」という点にある。
完璧な在庫管理システムを外注で作れば、確かに精度は高い。でも、現場の運用が変わったら、また外注に依頼する必要がある。
一方、DifyとGASで作った仕組みなら、プロンプトやスクリプトを自分で調整できる。
AIに聞きながら進める
この相談者には、「不明な点があればAIに聞く」というアプローチも推奨した。
例えば、「Difyで変数抽出ノードを使う方法」や「JSON形式での出力方法」など、わからないことがあれば、GeminiやChatGPTに聞けばいい。
AIの指示する方法と、講義で習った方法のどちらを使っても良い。重要なのは、「自分で調べて、試して、調整できる」という姿勢だ。
小規模テストから始める
最初から全商品を対象にするのではなく、数えやすい商品で小規模テストから始める。
精度を確認して、プロンプトを調整して、徐々に対象を広げていく。
この「小さく始めて、育てる」アプローチが、現場で回る仕組みを作る鍵だ。
スピード重視で、今の業務に合わせる
在庫管理をもっと精密にやろうと思えば、画像認識やQRコードで構築できる。
でも、現場で今すぐ回せる形を作るなら、写真を撮ったら在庫切れリストが出てくる仕組みの方が早い。
完璧な仕組みを作るのに3ヶ月かけるより、60点の仕組みを1週間で作って、実際に使いながら育てる方が、結果的に早く定着する。
AIツールとGASを組み合わせれば、この「スピード重視で、今の業務に合わせる」設計が可能になる。