「誰も触れないシステム」の末路。完全自動化より大切なメンテナンス設計

複雑なマクロと関数で構築された「ブラックボックス化」したシステムは、誰も触れない負債になる。完全自動化を目指すより、メンテナンス可能性を重視した設計の重要性を実例から解説します。

Tuesday, January 13, 2026

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「このシート、誰も触れないんです」

年明け早々、クライアントから届いた依頼メールを開いた瞬間、私は既視感を覚えました。

「以前お願いしたスプレッドシートの修正を、またお願いしたいです。今回は2026年版への更新と、いくつかの不具合修正です」

添付されたシートを開いてみると、複雑な関数とマクロが幾重にも重なり、まるで迷路のような構造になっていました。制作者が独自に築き上げた「ブラックボックス」。誰も触れない、負債と化したシステムがそこにありました。

「完璧な自動化」が生み出す、誰も触れない負債

このシートは、元々の制作者が「完全自動化」を目指して作り込んだものでした。関数とマクロを駆使し、できる限り人の手を介さずに動くように設計されています。

しかし、その「完璧さ」が仇となりました。

ブラックボックス化したシステムの特徴
  • 制作者以外が内部構造を理解できない独自設計
  • 複雑に絡み合った関数とマクロの依存関係
  • 一箇所修正すると他の箇所で計算が狂うリスク
  • 解析と修正に膨大な時間とコストがかかる

「このシート、誰も触れないんです」というクライアントの言葉が、全てを物語っていました。

簡単な修正では済まない、複雑すぎる構造

このシートの「2026年版への更新」と「不具合修正」を安全に行うには、私がゼロから全てのコードと計算式を読み解き、構造を理解した上で手を加える必要があります。

中身は読み解けばもちろん対応できます。しかし、把握するだけで膨大な時間がかかってしまう。

いわゆるExcelの簡単な修正依頼とは、まったく次元が違う作業量です。無駄に高機能であるがゆえに、かえって「頼みづらい」図式になってしまっているのです。

ここを省略して修正すると、他の場所で計算が狂ったり、データが破損するリスクが非常に高い。だからこそ、慎重に、時間をかけて解析する必要があります。

メンテナンス可能性という新しい基準

返信メールを書きながら、私はある提案を思いつきました。

現在の複雑なシートを使い続けるのではなく、「誰でも理解できる構造」にリニューアルする。ID自動付与や集計機能など、必要な部分は残しつつ、過度に複雑な自動化は削ぎ落とす。

その代わり、一部の操作を「プルダウンから選択する」といった手動に切り替える

こうすることで、次回以降の修正は私以外のエンジニアでも対応可能になります。つまり、メンテナンスコストが劇的に下がるのです。

ただ、この提案には一つの懸念がありました。クライアントは「手動」という言葉に不安を感じるのではないか、と。

気づき:「手動」は悪ではない

案の定、クライアントから返ってきたメールには、こんな一文がありました。

「手動にすると、操作が難しくなったり、ミスが増えたりしないでしょうか?」

この不安は、とてもよく分かります。「自動化」という言葉には、進歩や効率化といったポジティブなイメージがあります。一方で「手動」は、後退や非効率といったネガティブな響きを持ちます。

しかし、ここで私は改めて確信しました。

「完全自動化」を目指すことが、必ずしも正解ではない。

クライアントが不安に感じている「手動」の部分。しかし、ここで言う「手動」とは、難しい操作や計算を自分でするという意味ではありません。

「今までは勝手に文字が入っていたけれど、これからはプルダウン(リスト)から選んでね」といった、ごく一般的な入力操作に過ぎません。

「手動」の再定義
手動操作=難しい作業、ではありません。プルダウンから選ぶ、ボタンを押す、といったシンプルな操作も「手動」に分類されます。重要なのは、その操作が誰にでも理解できる明快さを持っているかどうかです。

私はクライアントに、こう返信しました。

「手動といっても、難しい操作ではありません。むしろ、誰が見ても何をすべきか分かる、明快な仕組みです。今の『誰も触れないシステム』より、はるかに安全で持続可能です」

「誰も触れないシステム」から脱却する

この提案は、クライアントにとって一見「後退」に見えるかもしれません。

しかし、長期的に見れば、これこそが「持続可能なシステム」への正しい道です。

  • 制作者が不在でも、他のエンジニアが理解できる
  • 修正や更新のコストが予測可能になる
  • 「このシート、誰も触れない」という状況から脱却できる

完全自動化を目指すことは、時に「誰も触れない負債」を生み出します。

中小企業こそ、メンテナンス設計を

この経験を通じて、私は改めて確信しました。

中小企業にとって、最も大切なのは「完璧なシステム」ではなく「誰でも触れるシステム」です。

大企業であれば、専任のエンジニアを雇い、複雑なシステムを保守し続けることができます。しかし、中小企業にはその余裕がありません。

だからこそ、初期構築の段階で「メンテナンス可能性」を最優先に設計する必要があります。

メンテナンス可能なシステムの3要素
  • 構造がシンプルで、誰が見ても理解できる
  • 一部の「手動」操作を許容し、過度な自動化を避ける
  • 制作者以外でも修正・更新ができる設計

今、私が目指しているもの

今、私は自社のシステムを構築しています。

そこで意識しているのは、「私がいなくても回る仕組み」です。複雑な自動化ではなく、明快な構造。誰が見ても分かる設計。

この案件を通じて学んだ教訓は、私自身の仕事にも活きています。

「誰も触れないシステム」を作らないこと。それが、持続可能な事業を築く第一歩です。

まとめ

完全自動化を目指すことは、必ずしも正解ではありません。

中小企業にとって本当に必要なのは、「誰でも理解でき、誰でも触れるシステム」です。

そのためには、一部の「手動」操作を許容し、メンテナンス可能性を最優先に設計する勇気が必要です。

もし今、あなたの会社に「このシート、誰も触れない」と言われるシステムがあるなら、それは見直しのタイミングかもしれません。

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サエ|裏方エンジニア

バックオフィス11年の経験で「終わらない手作業」の辛さを痛感。その原体験から、社長の"思考"そのものをNotionとAIで仕組み化する専門家として独立。
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